育英センター 田中の教育ブログ「間(ま)」
富山本部校別館(中学部)
ここまで、特に目立ってきた子供たちの変化について記事にしてまいりましたが、今回で一段落です。
以前の記事で、コロナウイルス禍による学校休校、オンライン授業増加の影響について述べました。
一部引用しますと…
なお、昨年のコロナ禍による影響ですが、特に各学校の現二年生への影響が深刻だと思います。
新一年生は、新しい学校・環境に慣れ、さまざまな規則を守ることを訓練する学年だったからです。
昨年は、それらを訓練しようにも、自宅待機の期間が長く、授業もリモートが増えましたね。
そして、学校での授業が再開されたとき……
座って授業が聞けない
皆に向けて先生が発した言葉を受信できない
騒いで他の生徒に迷惑をかけていることに気付けない
と言った子が増加してはいないでしょうか。
※統計が出ていないため、塾での生徒の様子と、自身の経験から推測しています。
――引用ここまで
あの記事を書いた後改めて考えてみたところ、人の話をじっくり聞けない子が増えたのは、日常の動画視聴にも一因があるのかもしれない、と思うようになりました。
※なお、過去の歴史にあった、ビートルズが教育に悪い、ビデオゲームが残虐な精神の元になる、などといった論争同様、全ての生徒にあてはまる話ではありません。
子供たちの余暇の過ごし方として、圧倒的に増えてきたのがYouTubeなど、動画の視聴です。
録画したテレビ番組を見る時もそうですが、動画の視聴において1.5倍速や2倍速で見る、少しでも間延びしていると感じればチャプターをスキップする、などが当たり前になっています。
さらに昨今の動画は、話している内容がテロップで画面下に出されることが多く、倍速で視聴してもある程度の内容は補足してくれるので、理解できてしまうのです。
しかし、生の人間の話に、当然2倍速やスキップはききませんし、テロップもつきませんね。
教師が一方的に話すような受動的な授業を受け入れられない子が、今後ますます増えていくのではないでしょうか。
そしてなにより、言葉の表面だけを受け取り、話し手の真意を理解できない子も増えていく可能性があります。
私は国語を教える者として、「行間」というものの重要性を理解しているつもりです。
そして授業においては、こちらが投げかけた言葉の真意を生徒が理解するまでの「間」をとることが大切だと考えています。
行間を埋めつくすような文章や、間を無くしマシンガンのように話す会話では、本来受け手に委ね、相手に考えさせるべき部分も、全てことばで表現されがちです。
そういった表現に慣れ切ってしまった子が、1から100まで説明されないと、内容を理解できないようにならないか心配です。
食べ物に例えるなら、柔らかい流動食に慣れきって顎が弱り、固いものが食べられなくなってしまいはしないでしょうか。
ちょっと立ち止まって考えること、そして大事だと思う箇所を繰り返し反芻し考えることの重要性は、増していくと考えます。
それと同時に、受動的な学びではなく、能動的、対話的な学びの重要性も同時に増していくと考えます。
話しは変わりますが、今年1月、塾生の高専受験者対象でオンラインの特別講座を行った時、最後にチャットにて質問、悩みの相談のコーナーを設けました。
そこで、時間切れに悩む生徒から、「どうやったら文章を速く読めますか」という質問がありました。
そこで私は皆に、文章を読むスピードを上げて、点数が果たして上がったか?と問いかけました。
設問に絡む箇所については、やはりじっくり腰を落ち着けて内容を理解しなければなりません。
速く読むことに意識がいきすぎて文の強弱が読み取れず、問題を解くために再度文章を読みなおして時間が切れる、という悪循環のほうを懸念します。
文章に触れた回数が多いほど、ある程度は読む速度が上がるでしょう。
しかし、大切なのは字面を追いかけるスピードが上がることではなく、理解した文章の数が多い人ほど「文脈を予測できる」こと、そして設問に絡むような「大切な部分が分かる」ことだと考えます。
言葉の表面的な意味だけをとらえても解ける設問もありますが、やはり、良問と呼ぶべきは、しっかりと生徒に考えさせる問題です。
文章の行間を読んで、筆者の主張や登場人物の心情を捉えるような設問で、得点の差が付くのではないでしょうか。
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