風鈴売り
富山本部校高校部
強烈な陽光が降り注ぐ猛暑。
一歩でも外に出たくないのが本音だろう。
冷房のしっかり効いた室内で、無機質なパソコンを目の前に、
あまり楽しいとは言えないニュースばかりを、
記憶に残すこともなくやり過ごす。
その時2階のベランダの物干し竿に下げておいた安物の風鈴が、
チリィ~ンと鳴った。
あっ。夏ってこれだったかもなあ、とふと思う。
まだ物心がつくかつかないかの頃の夏の記憶に、
家の前をゆっくりと行くロバの風鈴売りの映像が残っている。
ロバに引かせたリヤカーに、無数とも思える風鈴が吊り下げられ、
それが風に吹かれ、一斉に「チリン、チリン、チリン」と鳴きたてる。
目を閉じると,今でも心まで揺らす風が感じられる。
江戸の夏の風物詩に「風鈴売り」という商売があったことを知るまでは、
幼少期の僕が抱いた夢か幻想だと思っていた。
ロバは、馬か、あるいは人自身だったかもしれない。
たとえそれが夏の幻影であったとしても,
夏になるたび、こんな記憶がことあるごとに甦るのは、
我ながら素敵な話だと思う。
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