育英センター 田中の教育ブログ「GRIT①」
滑川校
2016年にGRITという本が発売され、世界中でベストセラーになりました。
アメリカのペンシルバニア大学の心理学者であるアンジェラ・ダックワース教授が提唱したGRITは、「やり抜く力」という意味の造語です。
Guts:根性、勇気、決断力
Resilience:回復力、元気、弾力性
Initiative:自発性、独創力、進取的精神
Tenacity:固執、不屈、しつこさ
これら4つの単語の頭文字を合わせると、GRITとなります。
なお、gritという単語を辞書で調べますと、「(車輪や機械の間に入り込んできしむ音を出す)砂や小石」以外に、「どんな苦境にも耐える根性、気骨」という意味が載っていました。
人間の成功は、生まれ持った才能で決まるのではなく、やり抜く力で決まる。
自身の決めた目標に対し、情熱と粘り強さを持って長期間取り組むことが出来る能力。
アンジェラ教授は、その能力=GRITは伸ばせる、と提唱します。
本書がベストセラーになったその後、当然批判的な論文や冷静な考証等も発表されました。
GRITを高めるために行う努力は、結局のところ、能力の発露や人生の成功に対して弱い効果しかもたない可能性があることや、GRITの構成要素の妥当性そのものを疑う内容などです。
そうして、GRITに対する世間の注目は落ち着きを見せました。
しかし私自身はこの本の内容に、今でもいろいろなことを考えさせられるひとりです。
私があまり好きではない言葉に、「親ガチャ」というものがあります。
おとなり韓国でも銀のスプーン、土のスプーンといった言い回しがありますね。
生まれた環境で人生が決まるのであり、努力をしてもムダ、といった刹那的な考え方が若い人たちに広がっているのだそうです。
また、さまざまな能力は親から遺伝するのだから、努力したところで限界がある、それは親のせいだ、という考え方もです。
ためしに、YouTubeの検索欄に”IQ遺伝”などと入れて検索してみてください。とんでもない量の動画が出てくるはずです。
自分自身が高校生の頃、周囲に落合信彦さんの本を読んでいる友達が多くいました。
ある程度の年齢の方は、「ああ、アサヒスーパードライのCMの人ね」と思われるかもしれません。
当時、私も友達から勧められ、何冊か読んでみました。読み終わって、ハッとしたのは努力に対する考え方です。
①裕福な、何一つ不自由のない家に生まれた人が努力すること
②努力しないと生きていけない人たちが努力すること
①のほうが②よりも大変なのではないか、高校生の青臭い当時の私が考えたことです。
努力をしなくても生きていけるのに努力するのは、②よりも大変だろうな…
そして周囲と自分を比べたとき、自分は努力しないと生きていけない側の人間だ、とも思いました。
ここで、この記事の冒頭の部分を繰り返します。
人間の成功は、生まれ持った才能で決まるのではなく、やり抜く力で決まる。
自身の決めた目標に対し、情熱と粘り強さを持って長期間取り組むことが出来る能力。
その能力=GRITは伸ばせる。
人生における「運」や「出自の不平等」を嘆くのではなく、それを当然と認めたうえで一歩踏み出そうとする人々へのanthemのように私は感じます。
長くなりましたので、次回に続きます。
余談
落合信彦さんの御子息であり、北陸に関係した話で言えば、金沢美術工芸大学客員教授でもある落合陽一さん(肩書、経歴がすごすぎてここには書ききれませんが)の、WEEKLY OCHIAIにおける、いろいろな人との対談は非常に面白いです。
花まる学習会、高濱先生との対談のURL(フル版ではありません)を貼っておきます。