時雨れる季節
富山本部校高校部
時雨降る季節になりました。
松尾芭蕉の忌日(命日)を「時雨忌(しぐれき)」というそうです。
忌日の陰暦10月12日がちょうど時雨の時節であったことと、
芭蕉が好んで時雨を句作に用いたからだと言われています。
人々をしぐれよ宿は寒くとも
人々の上に、時雨よ、降ってくれ。たとえ寒くなったとしても。
弟子や当座の人に、時雨の情緒、情趣を伝えたいという思いがこの句にはあるそうです。
芥川龍之介の『枯野抄』は、芭蕉臨終の場面が描かれている小説ですが、
師の臨終に立ち会った弟子たちは、その悲嘆の表情とは裏腹に、
次に死ぬのは自分ではないかとむしろ自身の行く末を心配する者や、逆に、
師の人格的圧力からようやく解放されるとむしろほっとして喜ぶ者など、
内心ひとりよがりな思いを抱く者ばかりで、
一心に芭蕉の死を悼む者は、ほとんどいなかったというお話です。
句作はもちろん、季節の風物への自らの厚い思いを、
なんとか弟子たちにわかってもらいたいと純粋に芭蕉が考えていたとすれば、
なんとも時雨れる-涙ぐんでしまう-せつないお話です。
ちなみに「時雨忌」は冬の季語のようです。
一雨ごとに冬の足音が近づいています。
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