絹の清水
富山本部校高校部
先だっての休日。「絹の清水」に水を取りに行った。
「清水」と書いて「しょうず」という。
黒部の生地に何か所かある湧水場の一つである。
ここの水を口にすると、気持ちも含め体内にこびりついた錆が一掃され、
身体がリセットされたような気分になる。だから年に都合2回程出向いている。
数年前、毎度のごとく、何本かのペットボトルに水をつめていると、
裏の細道をご老人が一人近づいてきた。公共の水場だから別に臆する必要もないのだが、
「あっ、あの、いいお水なので、時々いただきにきてます」
と、いささかビビりながら言うと、
「立山の伏流水やからね…。どこから来られたがけ?」
「砺波の方からです」
「あっちには友人がおってね。春にはきれいな花が咲いて、いい祭りがあるとこや」
と、ご老人は表通りを眺めまわして、少し寂し気な表情を浮かべた。
つられて町を見渡すと、窓に面した障子がやぶれた、
明らかに空き家とおぼしき家が何軒かあった。
振り返ると、柄杓で一口水を飲んで、いかにも「おいしい」という顔をした細君がいて、
ご老人もまた、「そうだろう、おいしいだろ」という顔で返してくれた。
コロナ禍を経てからも、2度ほど絹の清水に出向いたが、
以来、あのご老人には出会っていない。
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