サピア=ウォーフの仮説
魚津本部校
表題の「サピア=ウォーフの仮説」とは、言語的相対論(Theory of linguistic relativity)とも呼ばれる、アメリカの言語学者E.サピアやB.ウォーフの著作に見られる人間の言語と思考に関する言語学上の仮説です。
「強い仮説」と「弱い仮説」の2つのバージョンが知られており、強い仮説は「人間の思考は使用する言語によって決定される」、弱い仮説は「人間の思考は使用する言語に影響を受ける」とそれぞれ主張します。
日本語と英語を操るバイリンガルの人がそれぞれの言語を話すときで、自身の性格が変わっていると感じることがあるようなのですが、この仮説が述べているのはまさにそのようなことです。(ある研究ではバイリンガルの2/3が使用する言語によって性格が変わると述べているそうです。)
サピア=ウォーフの強い仮説に関しては批判も多いのですが、弱い仮説に関しては専門家の間でもおおむね受け入れられているようです。
「言語が思考に影響を与える」、思考の土台が言語である以上言われてみれば当たり前のような気もするのですが、この仮説は私が普段担当している英語という教科において重要な含意がありそうです。
最近高1英語の授業後にある生徒から英文法に関する質問があり、その内容は「日本語の語尾(「~した」など)だけで(現在)完了形を使うべきか過去形を使うべきか判断することは可能か?」と言うものでした。私は「語尾だけで判断することはできないので「完了形」と「過去形」の概念をしっかり理解して文脈に応じて適切に使い分けるのが重要」とその生徒にアドバイスしましたが、その理由を説明するために、「私は宿題をし終えた。」という日本語文を英訳することを考えてみます。この日本語文を「いまちょうど~し終えたところだ」という「完了」の意味で解釈し英訳すると”I have finished my homework.”(現在完了形)、「(過去に)宿題を終えた」という単なる過去の事実を表していると解釈すると”I finished my homework.”(過去形)となります。
「~した」という日本語は「完了」を表現しているのか「過去」を表現しているのかあいまいで、普段私たちは特別意識することもなく文脈でどちらの意味かを判断しています。しかし英語の場合は「完了」と「過去」に文法上異なる形式が与えられており、普段からそれらを別物として使い分けているのです。私が言いたいのは「日本語では完了も過去も区別できない」と言うことではありません。完了と過去の概念の区別はあるのですが、その区別が言語の形式として表面的に現れないということです。ただ、その表面上の形式の違いが英文法の理解を妨げる原因の1つである事は想像に難くありません。
今回は「時制」という一つの文法事項を取り上げましたが、英語を学ぶ際には是非日本語との違い(や類似点)に着目してみてください。外国語を学ぶということは異なる世界の見方を学ぶことだとよく言われます。英語を学んでいくと、「英語ではそんな考え方をするんだ」「日本語だったらそんな表現はしないな」など様々な発見があると思います。そういった発見が増えていくにつれ皆さんの英語に対する理解は着実に深まっていくことでしょう。
高校英語担当 O
魚津本部校 校舎ブログブログ新着
-
魚津本部校
ローマ字が変わるらしい
-
魚津本部校
金だるま
-
魚津本部校
完璧