等々力
富山本部校高校部
進学する大学が決まり、来週あたりから新生活の地へと旅立つ人も多いだろう。
僕が東京で最初に暮らした町の最寄り駅は「等々力」だった。「トドロキ」と読む。
駅前を出て南にやや急な坂を上っていくと、
環状８号線（通称環八―カンパチ―）がドンと立ちふさがる。
東京らしく夜間でも無数の車と排ガスが行き交ういかにも都会の道路だ。
ところが、環八の橋梁脇の階段を深く少しずつ下りて行くと、
「等々力渓谷」という谷川が多摩川に向け下っている光景に出くわす。
この渓谷を散策していると、上空にあの環八が走っているなんてとても信じられない。
信州辺りの渓谷と変わらない、清涼な空気感と森の音を一身に浴びることができる。
上京する前には全く想像もしていなかった場所だったが、
そこは都会にいながら、一番春の訪れを身に染みて感じることのできる場所だった。
旅立つ皆さんが暮らす町には、どんな想定外の、優しい場所があるだろうか。
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