倫理の時間20 「物を捨てる私」と『イカの哲学』
富山本部校高校部
私はよくミスをする。
いろんなミスがあるが、一番多いのが本当は必要だったものを捨ててしまうことだ。
その時は必要でなくても、後になって必要になり、捨てずにとっておけばよかったと思うことがよくある。
自分にだけ関係する物であればよいのだが、ごくたまに人に迷惑をかけてしまうこともある。
これはさすがに申し訳ない。
今では自分のことを戒めを込めて「捨て魔(すてま)」と呼んでいる。
なぜ、物をすぐに捨ててしまうのか。
自分が物を捨てるときの気持ちを思い返してみる。
なかなか思い出せるものではないが、
物を捨てるとき、基本は深く考えていない場合が多いような気がする。
逆に、これはこうなる可能性があるのではと考えることができると、捨てずにとっておくこともある。
つまり、物を捨てる際に一旦、
「なぜこれがつくられたのか。」「なぜ今ここにあるのか。」「今後どのような必要性があるのか。」などを
一旦考えてみることが大切だということであろう。
こんな至極当たり前のことを考えていた時に、ある一冊の本のことを思い出した。
波多野一郎という方が書かれた哲学書『イカの哲学』である。
本の詳しい内容は省略するが、
この本では「実存」ということが大きなテーマとなり、
「実存」に気づくことが平和につながるということが述べられている。
イカとコミュニケーションができたら、何も考えずに処理を行うことができるだろうか。
おそらく情がわいたり、相手のことを考えるようになり、処理することができなくなるのではないだろうか。
私がゴミを捨てるときもそう。
確かに、何も考えずにこれはゴミと思っているうちは、すぐに捨ててしまうが、
今ここにある物の背景や意味を深くとらえ直すことで、捨てることを止めることができる。
これからは、物をただの物ととらえるのではなく、何らかの意味をもったものととらえ直すことで、
すぐに捨てるのを踏みとどまるよう努力したいと思う。
