育英センター 田中の教育ブログ「埼玉県立伊奈学園総合高校その2」
滑川校
前回の記事の続きです。
埼玉県立伊奈学園総合高校の7つの学系について、前回は普通学系(情報経営、理数、語学、人文、生活科学)についての記事でした。
今回は残りの2つの学系、スポーツ科学、芸術について見ていこうと思います。
これら2つの学系は、普通学系が入学後に選択するのに対し、出願時に学系を選ぶ点が異なります。
⑥スポーツ科学…普通科の主要教科を学習しながら、体育・スポーツに関する専門的な科目を学ぶ。運動部に所属し競技能力の向上を目指しながら生涯を通してスポーツに関わることのできる資質や能力を育てる。進路については、関東大会、全国大会等で活躍した者を中心に推薦等で大学に進学するほか、一般受験においても大半が大学・短大に進学する。将来、スポーツ関係の分野(体育教員・トレーナー・インストラクターなど)を目指す人に適している。
スポーツ科学志望者には、学力検査のほかに体力測定や実技検査も課されます。
ただし埼玉県の県立高校は、実技試験・面接や作文のみで選抜するような推薦入試、私立が設けているような特待生制度はありません。
1次選抜と2次選抜(3次選抜)で、学力検査の点数と、内申点・スポーツの実技の得点の比重を変える選抜方法ですが、いずれにせよ学力検査を突破する必要があります。
印象としては、体育学部系の大学進学をサポートする富山北部高校普通科の体育コースと近い感じですかね。
なお、伊奈学の部活動ですが、非常にどの部も活発です。
生徒数が多く、敷地も東京ドーム3個分と広いため、ラグビー、サッカー、野球などのチーム競技はもちろん、ラクロス部や山岳部、体操競技部など、いろいろな種類のスポーツに打ち込むことができます。
スポーツにおける実績については、陸上競技部、体操競技部、水泳部、空手道部、弓道部が全国大会に出場しているほか、硬式野球部も強豪として知られています。
今年の広島インターハイでは女子陸上が凄かったようですね。夏の高校野球も地方大会で準々決勝まで進みました。
少し話がそれますが、2025夏の甲子園出場校49校中、公立の高校は6校のみです。
そもそも県立高校は、1つのチームを作れるだけの部員がいなくなってきています。
大規模校ができるなら、特にチームスポーツの活性化が期待できますね。
⑦芸術…芸術系は、さらに音楽、美術、工芸、書道の4つの専門に分かれる。
音楽
音楽大学進学希望、教育学部進学希望、私立文系進学希望など本人の希望によって取得科目を選択して時間割を組み立てる。
東京藝大に過去50名以上の合格者を輩出している名門。
美術・工芸
多くの生徒が美術・工芸の上級学校に進学する。
芸術系の大学はどこも大変倍率が高く、浪人覚悟の狭き門として知られるが、現役でも多くの合格者を毎年輩出。
書道
書道を中心とした大学進学希望者が多数。教員免許を取得して、教育の現場に立っている出身者も数多い。
富山県の県立高校では、呉羽高校の音楽コースや高岡工芸高校が似ているのでしょうか。
部活動や選択科目としてではなく、書道を中心とするカリキュラムを持つ高校は富山県はもちろん、近県でもなかなか見当たらないですね。
・・・ということで、2回にわたって埼玉県立伊奈学園総合高校についてまとめて参りました。
富山県が設立を目指す、大規模校がどのようなものになるかはベールの中ですが、伊奈学園をモデルとするのであるならば、進学特化の高校ではなく、総合学科系の高校になることが予想できますね。
8/21追記
8/19の第3回富山県総合教育会議にて「新時代とやまハイスクール構想」実施方針の素案が発表され、大規模校をはじめ、未来の20校の目指す姿がぼんやりと見えました。
大規模校は素案段階ではかなり伊奈学に近い感じですね。教育内容はスタンダード(伊奈学の普通学系列?)がベースとなりますが、未来創造としてスポーツと芸術(伊奈学のスポーツ科学系列および芸術系列)が併記されています。
個人的に驚いたのは、大規模校の職業系選択科目例の中に農業が入っていたことです。
農業の学習や実習を行うには、それなりに広い敷地が必要ですが・・・
農業を入れる代わりに伊奈学の語学(1年次から第2外国語を学習)が無くなった感じですかね。
理科は生物・物理・化学・地学が履修できるようです。ここは大規模校の強みですね。
大規模校の職業系専門科目に記載されている、商業、家庭については伊奈学の情報経営、生活科学と同じ位置づけであると思われます。
以下、恒例の余談です。
IBについては、指導資格を持つ教員の確保が何より大変そうですね。
より待遇・条件が良い学校へ教員がすっと移動したら・・・など、人口が少ない地方都市でDP認定校を設立・維持していくのは相当な困難、そして費用(公立ですので税金ですが)が伴うでしょう。
金沢勤務時代、金沢市内の某高校がIB認定にむけて動き出す、と聞いたとき、学校へ直接話を伺いに行こうと思っておりました。
しかし直後に富山に転勤になってしまい、行けないまま現在に至ります。よってより踏み込んだ考察は書けません(申し訳ありません)。
なお、富山に転勤してからかなり時間が経ちますが、金沢でもPYP1校のみの現状です。ハードルの高さが容易に想像できます。
もし富山県でDP認定校ができると、非常にインパクトが大きいですね。