ためらひの時間
富山本部校高校部
夏のあまりに強い日差しに、一歩でも外に出ることをためらってしまう。
ためらう(躊躇う)。
言うまでもなく、心が迷ってなかなか決心がつかない(ちゅうちょする)ことである。
《ややためらひて、仰せ言伝へ聞こゆ》
まだ幼い光源氏を残し、母桐壺更衣は病により他界する。
悲嘆にくれる桐壺更衣の母君の元に、帝から一人の女性が遣わされる。
上記は、その女性が帝の言葉を母君に伝える場面である。
《いくらか心を静めて、(帝の)おっしゃったお言葉をお伝え申し上げる》
母君に触発されてか、自身も悲しみを抑えきれない使いの女性が、
きちんと帝のお言葉を伝えなければと、乱れた心を一旦落ち着かせたわけである。
「ためらふ」は、つつがなく次のふるまいに移るための、
「心を静める・落ち着かせる」という意味でも使われていたのである。
35℃を超える外気。今日も颯爽と外へと足を踏み出すために、
塩分、水分をしっかりこの身に取り込みつつも、
「ためらふ」時間がとっても大切な今日この頃である。
