「男」とは
富山本部校高校部
保元の乱に敗れて讃岐国に配流された崇徳(すとく)天皇が、
中宮以上に愛した女性が兵衛佐(ひょうえのすけ)と呼ばれた女性です。
歌詠みとして天皇に仕えた養父の縁で宮中に出仕し、天皇に見初められました。
「兵衛佐」という名も、その養父の役職に由来するものだそうです。
ところで、「養父」ということは、本当のお父さんはいずこに?ということですが…、
まことの親(=実父)は、男にはあらで、紫の袈裟(けさ)など賜りて、白河の御寺の
司なりけり。〔『今鏡』より〕
「男にはあらで」とは「男ではなくて」ということですが、この箇所を読んで、
お父さんが男ではないとはどういうこっちゃ!実は女なのか?
と思った受験生が必ずいたはずです。
古語辞典には…
をとこ(男)(名) ① 元服した一人前の男子。 ② 夫。恋人である男。
③ 在俗の男(出家していない男) ④ しもべ。下男。 など。
そう。③のような意味があるのです。実父は、在俗の男ではない。
「白河の御寺の司なりけり」がそれを裏付けています。
出家していた人が「男になる」とは、「在俗の男になる」ということです。
俗世間に戻ってくることを「還俗(げんぞく)する」とも言いますので、
ぜひ覚えておきましょう。
