晩夏、そして海水浴
富山本部校高校部
昔はお盆を過ぎると土用波が立つから、海水浴には向かないと言われたものです。
だから、海水浴は必ずお盆前に行っていました。
幼少の頃の海水浴にまつわる想い出を数片。
城端線から氷見線に乗り継いで、電車で雨晴海岸か島尾海岸に行った。
当時の電車は冷房がなく、開け放たれた窓から中越パルプ(通称チュウパ)の工場から発せられる異臭が車内に充満した。くさっ!
紙の製造には悪臭を伴うことを初めて知った。
―チュウパの「薫り」は今でも風に乗って、北へ南へと漂っている―
海に突き出た桟橋に上ろうと下の海に足を踏み入れるやいなや、陰に潜む蟹に足の小指を挟まれた。見ると血が出ていた。ギャーギャー泣きわめいて親を困らせた。
砂浜の桟橋の下には蟹が潜み、挟まれると痛いということを初めて知った。
海に浮いていたクラゲを捕まえ、水の入ったビニール袋に入れて家に持ち帰ろうとしたが、帰りの電車の中でふとビニール袋を見ると、クラゲの姿が消えていた。
クラゲは真水の中では溶けてなくなってしまうことを初めて知った。
海への交通手段が電車だったのは、戦後のどさくさに青年期を過ごした父が、
40半ば過ぎまで運転免許を持たなかったからですが、
幼少期の僕には、電車にのんびり揺られて出かけた海水浴のほんの半日が、
長い長い旅のように感じたことを、
どういうわけか晩夏になると、思い出すのです。

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