新明解
富山本部校高校部
私が長年愛用している国語辞典が『新明解 国語辞典 第四版』(三省堂)である。
いっとき、その記述内容がマスコミ等でもささやかな話題となった。
例えば「動物園」を引いてみると、
「生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕らえて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀無くし、飼い殺しにする、人間中心の施設」とある。
また「学校」を引いてみると、
「一定の条件に合う人を対象として、何人かの教師が組織的方法で、それぞれの目的に応じた教育をする所」とある。この解釈はまあいいとして、この後に「いやいや――に通う」「苦学して――を終える」「トコロテン式に――を出る(=卒業する)」といった、おやっと思う文例が並ぶ。
さらに「恋愛」を引いてみると、
「特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒にいたい、出来るなら合体したいという気持ちを持ちながら、それが常にかなえられないで、ひどく心を苦しめる(まれにかなえられて歓喜する)状態」とある。
最後に「おこぜ」の意味。
「背びれに毒のとげが有る近海魚。ぶかっこうな頭をしているが、うまい」
「うまい」ってなんだ!と思う。初めて「読んだ」時、「動物園」の解釈が最も衝撃的だったが、私にはライターの主観やネガティブな感情が短い一文の中にこれほど生々しく表出している辞書は他にないと思われた。彼にとって「学校」はさして楽しい場所ではなく単なる通過点だったのではないかとか、失恋や悲恋の繰り返しの青春だったのではないかとか、その人生の一端さえも想像してしまうほどに。
果たして皆さんはこの辞書を「読んで」何を感じ取るだろうか。
追伸
最近の「新明解」は、とがった表現が鳴りを潜め、案外普通の辞書になっているようです。「本物」を見てみたいなあと思う人は、私の手元にある「第四版」をご覧あれ。
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