春愁
富山本部校高校部
長く凍てついた冬の季節がようやく終わりを迎え、世界が柔らかい光と優しい暖かさに包まれる季節。春はただそこに生きる人すべてに活力を与え、気持ちを前向きにするエネルギーに満ち溢れている、ように見える。
先だって現役での奮闘虚しく、もう一年予備校で勉強を続け、志望大学への再挑戦を決めた生徒と話をした。
一年がんばって再挑戦したものの、今年も宿願かなわず、決して本望ではない大学への進学を決めた生徒とも話をした。
合格を勝ち取り、晴れて希望通りの道に進むことができたにも関わらず、今までとは一変する生活に不安を覚える生徒とも話をした。
春という季節の到来は案外、というか必然的に「愁い」を伴う。大なりとも小なりとも。
深い「愁い」を抱く者には、その柔らかい光や優しい暖かさがかえってわずらわしくもせつなくも感じられる。
桜は満開になるやいなや、一陣の風で舞い散り、また舞い散り、間もなく鮮やかな葉桜に変わるはかなさと美しさがある。そして来春にはまた……。
今抱く「愁い」も長い人生からすれば、ほんの一瞬で散り行くはかないもの、そしてそれは同時に美しさを誘うもの。ほんのいっときでも、そうしみじみと感じられる時間を過ごすことができれば、一瞬一瞬を大切に生き、まずは一歩踏み出し、そしてまたもう一歩踏み出そうという勇気が湧いてきそうな気がする。
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