日本語は難しい言語なのか【番外編 古文にみる台風】
富山本部校小学部
台風が大変なことになっています。
毎時10kmととにかく足が遅い今回の台風10号は,暴風域を失いつつも,8月30日16:30現在瀬戸内海辺りを彷徨っているようです。九州・中国・四国地方をすっぽり覆う雨雲,と考えると割とシャレになっていません。
「周囲三方を山,一報を海に囲まれている」という,どこかの記述問題で見たようなシチュエーションそのものの富山県に住む身からすれば,「富山県にやってくる台風は相当気合の入ったヤツである」という思いがあります。
遠方で発生し風と雨を吹き散らしながら勢力を弱めつつ接近し,揚句立山連峰を越えなければならないという試練を経てやってくるのだからそりゃ強かろう,というものです。実際,私も成人以降台風で困った経験など1,2度しかない訳です。
富山県民にすれば馴染みのない災害ですが,正月の地震同様,こういった災害はいつ我が身に降りかかるか分かりません。備えを万全にする一方で,被災された地域の一刻も早い復旧・復興を願うばかりです。
そんな台風ですが,古来日本人は台風に悩まされていたらしく,かの「源氏物語」にもその記述がみられます。
(前略)今年の野分の風は例年よりも強い勢いで空の色も変わるほどに吹き出した。草花のしおれるのを見てはそれほど自然に対する愛のあるのでもない浅はかな人さえも心が痛むのであるから、まして露の吹き散らされて無惨に乱れていく秋草を御覧になる宮は御病気にもおなりにならぬかと思われるほどの御心配をあそばされた。おおうばかりの袖というものは春の桜によりも実際は秋空の前に必要なものかと思われた。日が暮れてゆくにしたがってしいたげられる草木の影は見えずに、風の音ばかりのつのってくるのも恐ろしかったが、格子なども皆おろしてしまったので宮はただ草の花を哀れにお思いになるよりほかしかたもおありにならなかった。(「源氏物語」与謝野晶子訳)
ここでいう「野分」が現在における台風であり,上記の内容からも,風物詩というより程度によっては恐怖の対象にもなり得たのだろうと想像できます。
「野分」が災害である,という点を一旦忘れれば,「(立春から数えて)二百十日頃に野の草を吹き分ける強い風」だから野分,という言葉の成り立ちは中々に風流なものではないかと感じるのです。
……そしてまた語彙が増える。もうどうしろと。
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