まさかの時に
富山本部校高校部
椎柴(しいしば)の樵(こ)りはてにけり後生立て(ごしょうだて)
今は八坂(やさか)のたふとげもなし
あまたの人が「八坂の塔」と呼ばれる五重塔に登っていた時、その塔が揺れた。
「いかに、かくわろきことなせそ。さなきだにあやふくおぼゆるに」
(おいおい、そんなよくないことをするな。ただでさえ危なく感じられるのに)
上層の人々は、下の若者たちがおもしろがって塔をわざと揺らしているのだと思い込んでそう下に叫ぶが、実は大きな地震だったのである。
人々が命からがら塔から降り、とある人が詠んだ歌が上記の和歌である。
「樵る」には、「懲りる」の「懲る」が掛けられており、
「後生立て」は「極楽往生を願う」こと。
「たふとし」の「たふ」には「塔」が掛けられている。
〈椎の木の小枝を伐ることを樵るというが、私はすっかり極楽往生を願うことに懲り懲りしてしまった。(地震で怖い思いをした)今はこの八坂の塔も尊い様子に思われない〉
天変地異を前にすれば、神仏の思し召しすら何の甲斐もないのである。
来週から黄金週間。
各地へ長い旅に赴く方々には、有事の際自分や家族の命を守る心構えのごときものも
そっとスーツケースの中に忍ばせておいていただけたら、と思うわけである。
