けものたちの「顔」
富山本部校高校部
何年前だったか、359号線を金沢方面に向かって車を走らせていた時のことである。
県境あたり、山道の途中で道路工事の片側通行信号に出くわし、
赤信号で結構長い時間留まることになった。
ふと右手の田畑の方に目を向けると、丘の向こうにさわやかな青空が広がっていた。
突如である。
田畑脇奥のやぶの中からあぜ道に沿って、大きなイノシシが飛び出してきたのだ。
背後には、3、4匹の子供―うり坊―を引き連れていた。
おっと思うや否や、親イノシシと不意に目が合ったような気がした。
面白かったのは、その一瞬のイノシシの「顔」である。
やべっ、人がうごめく領域に足を踏み入れてしまったぞ!という「顔」をしたのである。
いや、私には確かにそういう「顔」に見えたのである。
次の瞬間、親イノシシは取り急ぎ踵を返して元のやぶの中に戻って行った。
うり坊たちも親のあとをちょこちょことやぶの中に戻って行った。
最近、市中での熊出没情報が後を絶たない。
畑の作物を食い荒らすイノシシの話もたびたび聞く。
そういう話を聞くたびに、さも人間世界とは一線を画すような「顔」をした、
あのつつましやかなイノシシ親子の姿が、しみじみと思い出されてならないのである。

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