彼らの声に癒される頃
富山本部校高校部
宵口に残暑の火照り(ほてり)を冷ますため、
庭を前にテラスにじっと座っていると、鈴虫やコオロギの合奏が響いてくる。
ホッ、とする。
昔、父が何匹かの鈴虫をどこかで買ってきて、
その飼育ケースを茶の間の隅に置いていたわけだが、夜が深まるにつれ、
むつかしきまで鳴きののしるこそいみじけれ
〈わずらわしいくらい泣き騒ぐことはなはだしい〉有様であった。
中日ファンの父は、テレビ中継のない中日戦をよくラジオで聞いていたのだが、
プロ野球中継のアナウンスと、それを聞く父の歓喜や慨嘆の叫び、鈴虫の合唱が、
決して調和することなく茶の間を飛び交う様は、とても涼を求めるどころではなかった。
以後、どういうわけか、父が鈴虫を飼うことは二度となかった。
ちなみに、スズムシの古名はマツムシ、マツムシの古名はスズムシ、
コオロギの古名はキリギリスらしい。なんだかややこしいが、
古辞書にそう表記してあるとか、こう書いてあったとかが、名の変更の由来のようだ。
しかし、日頃古文を教えていながら、
今に至るまでこれを覚えようという気はさらさらなかった。
こうして夏の名残を残すテラスで、彼らの美しい合奏に耳を澄ましていられれば、
それで十分なのである。

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涼しくなってきましたね