育英センター 田中の教育ブログ「N-E.X.Tハイスクール構想」
滑川校
今回は文部科学省が主導するN-E.X.Tハイスクール構想について触れたいと思います。
文部科学省HP↓
https://www.mext.go.jp/nexthighschool/
令和8年2月、文部科学省は「高校教育改革に関する基本方針」を発表しました。
公立高校改革のために3000億円規模の基金を準備し、各都道府県から3~4校「改革先導拠点」となる高校を募ったのです。
ここで、「改革先導拠点」という言葉についてしっかり考えなければいけませんね。
国から交付された資金は、単にその高校の改革のためだけに使われるのではありません。
改革先導拠点校に選ばれた高校は、改革のパイロットケースとして、教育内容の重複する他高校にその成果を波及させる、ノウハウを共有する、資金で導入した設備を共用する等、同地域の他校の改革を先導していかなければならないのです。また、そういう計画でなければ資金はおりません。
既報の通り、富山県では小杉高校、魚津高校がまず先に改革先導拠点校に採択され、富山商業高校、高岡工芸高校が追加申請、受諾されています。(県のHPは下記URL)
https://www.pref.toyama.jp/300201/kyoikuzyuzitu/koukoukyouikukaikakur080915.html
改革計画は3つの類型に沿って作ります。(詳細は下記の文部科学省資料)
https://www.mext.go.jp/content/20260213-mxt_koukou01-000046079_03.pdf
N-E.X.Tハイスクール構想 改革先導拠点 3つの類型
① 専門高校の機能強化・高度化 (アドバンスト・エッセンシャルワーカーの育成など)…高度な技術で地域産業を支える人材の育成
② 普通科改革を通じた高校の特色化・魅力化(文理の双方の素養を有する人材の育成など)…理数系人材育成・文理融合の学びの実践
③ 地理的アクセス・多様な学びの確保…遠隔授業などによる高校教育へのアクセス確保や、多様な学習ニーズに対応した教育機会の確保
富山商業、高岡工芸は類型①「専門高校の機能強化・高度化」 で追加申請が受諾されました。
富山商業は将来の未来探求ハイスクール(得意を生かせる学校)として、高岡商業、中央農業、南砺福野、富山工業、高岡工芸が協力校となっています。17億4千万円を上限とした交付が決定しています。
https://www.pref.toyama.jp/documents/57158/20260915_syougyou.pdf
高岡工芸は将来の実践ハイスクールという計画でしょうか。富山工業、砺波工業、魚津工業、富山商業、高岡商業が協力校となっています。こちらは21億1千万円を上限とした交付が決定しています。
https://www.pref.toyama.jp/documents/57158/20260915_kougei.pdf
小杉高校は類型③「多様な学びの確保」で11億3千万円の交付が決定しています。
未来探求ハイスクール(なりたい自分を見つけることができる学校)として、外国にルーツを持つ生徒や不登校傾向の生徒など、多様な背景を持つ生徒たちへ個別最適な学びの場を提供する予定です。
県内初の夜間中学として令和9年4月開学予定の高志のあかり中学校(雄峰高校内)、上市高校、富山いずみ高校とも協力していく計画となっています。
https://www.pref.toyama.jp/documents/56736/kosugizentai.pdf
第一期(2029~)にスタートする未来探求ハイスクール4校の成果は、その後の未来探求ハイスクール設置計画にも影響を与えるはずです。
次に魚津高校についてです。(5月のオンラインセミナーで申し上げた内容とかなり重複しますがご了承ください。)
魚津高校は類型②「普通科改革を通じた高校の特色化・魅力化」で12億2千万円の交付が決定しています。
これにより富山県の普通科改革の先導校としての役割が求められます。具体的には、主に理数系重視モデルを県内他校に普及する役割です。
https://www.pref.toyama.jp/documents/56736/uoduzentai.pdf
さて、ここで文部科学省の進めるN-E.X.Tハイスクール構想の前提を見ていきたいと思います。
2040年の社会は、AIをはじめとするデジタル技術の発展や社会の急速な変化により、将来を予測することが難しい時代になると考えられています。そのような社会では、知識を身に付けるだけでなく、自ら課題を見つけて考える力や、多様な人々と協力しながら新たな価値を生み出す力がこれまで以上に求められます。
N-E.X.T.ハイスクールは、生徒一人一人の可能性を広げ、未来社会を主体的に切り開く力を育むとともに、地域や社会の発展を支える人材を育成するための高校教育改革の取組です。
(文科省HPより引用)
2040年問題に対応できる子供たちを育てるため、高校教育改革が必要である、ということだと思いますが…2040年問題とはどのようなものなのでしょうか。
2040年問題
・超少子高齢化社会…65歳以上人口がおよそ4000万人(日本の人口の35%程度)
・シンギュラリティの到来…レイ・カーツワイル氏は、2045年にAIが人類の知能を超え、社会や生活に計り知れない急激な変化をもたらす転換点が到来すると予測している。
スチュアート・アームストロング博士(オックスフォード大)は2040年頃と予測、いずれにせよ急激なAI・デジタル技術の発達は将来をより不確実にしている。
・理系人材の圧倒的不足…労働力の需要と供給のバランスが取れない可能性があり、野村総研やリクルートワークスは、全体で1100万人前後の労働力不足になるのでは、と予測している。特にAIに仕事を奪われる事務職は437万人程度が余剰となり、AI・ロボットに関連する理系人材は339万人不足となる見込み。
理系人材の将来の不足に備える意味もあり、N-E.X.Tハイスクール構想では、2040年に普通科の文系・理系の割合をおよそ1:1にする目標です。(現在の普通科の文系・理系の割合はおよそ5:3→※文理分けのはっきりしない普通科の生徒を除いた数字)
魚津高校においても、下記の改革目標を掲げています。
※県HPより抜粋
入試科目の英数理の傾斜配点を選択(理数系科目重視選抜)できるようにし、理系に適性のある生徒を入試段階から確保する、という計画もあります。
私の経験上、小~中で理数に特化し、プログラミングや機械に興味を持って何かを実践している子は、国立高専を志望する率が高いように思います。
私立高校、そして国立高専との生徒獲得競争は、少子化の中一段と激しくなっていくのかもしれません。
これからの正式発表に注目していきたいと思います。
今回の記事は以上です。
以下、余談です。
理系科目を苦手に感じている生徒を理系に進ませる、というのは現実的ではありませんよね。
また高校の難化した教育課程で理系に興味を持たせるというのは、小学校・中学校の段階で興味を持たせるよりもハードルが上がっていると思います。
そして何より、こどもを人材と定義し、本人たちの希望を極力理系へとむけていく、という国の政策は、富山県の考える「こどもまんなか」ではなく、大人が思う「こどもまんなか」のような気がしてなりません。
