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美しさと泥臭さと ~とある作品の「キャッチコピー」の話~

富山本部校小学部

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4月29日(水・祝)~5月6日(水・祝)の間、
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※本記事は、そうは見えませんが日本語シリーズの続きです。
※本記事は主に宮崎駿監督作品の極々軽度なネタバレを含むかもしれません。ご了承ください。

 

 

 

これは何にでも当てはまる話ではありますが、何かをゼロから生み出すにあたって、そのコンセプトが曖昧であればそれは誰の心も打たないものです。創作の世界の話なら、それは「メッセージ性」という言葉にも置き換えることができます。そして、それを受け手側に端的に伝える「キャッチコピー」からは、不要な部分を削ぎ落した故の美が感じられる、と私は勝手に思っています。

 

例えば、筆者が校舎のハロウィンイベントで頻繁にコスプレを披露していた(最近はイカツいジャックオーランタンを被って鎮座していますが)ポルコ・ロッソを主人公とした宮崎駿監督作品、映画『紅の豚』。以下がそのキャッチコピーになります。

 

 

「カッコイイとは、こういうことさ。」

 

 

超イカすキャッチコピーですが、「『ハードボイルドな豚』という異質な造形の主人公が第二次世界大戦前夜のアドリア海で繰り広げる空戦スペクタクル」という作品の全体像をポスター1枚、15秒のテレビCMで語るとき、このキャッチコピーを添えるだけで、あの作品世界に漂う空気がアドリア海の日差しや潮の香りと共に感じられる、そんな気がするのです。

 

なに食ったらこういうセンスを養えるのか、もし叶うならば、糸井重里氏にはぜひご教示願いたいものです。

 

さて、スタジオジブリというか宮崎駿監督作品で、特にそのキャッチコピーが一世を風靡した作品と言えば、やはり『もののけ姫』が挙げられるでしょう。

 

「〇の呪いを受けて旅立った少年と山犬に育てられた少女が、権力者の業やそれすら吞み込んで弱者救済を成そうとする人々の業、そんな人間たちに森の支配者たる立場を脅かされた神々の怒りに翻弄され、果てに人知の及ばぬモノと立ち向かう。」…そんな本作のキャッチコピーはこうでした。

 

 

「生きろ。」

 

 

不要なものをすべてかなぐり捨てたが故に得られる美の極致のようなキャッチコピーに、本編の映像美と併せて身震いした若かりし日を思い出します。

 

ただ、宮崎駿と同じ土俵に立つ人々は、どうやら素直に受け止められなかったようでして、1997年の『もののけ姫』公開後、そのアンサーとも取れるコンセプトを持つ作品群が登場します。

 

その中でも特に切れ味鋭いツッコミを入れてきたのは『機動戦士ガンダム』の生みの親、富野由悠季という人でした。

 

「宮崎駿と決着が着くまで出られない部屋」に閉じ込めたい作家第1位と私の中で話題の富野監督は、1998年放映のアニメ『ブレンパワード』のキャッチコピーにこのようなものを用意してきました。

 

 

「頼まれなくたって、生きてやる!」

 

 

痺れますね。キレッキレです。

 

そもそも、こういうキャッチコピーは糸井重里氏のような専門家や広告代理店が作成・提案するものなのでしょうが、企画立案・脚本・絵コンテ・原作小説執筆・主題歌の作詞をこなし、果ては現場ヤバい時に原画のヘルプにも入ったという富野監督のこと、これはおそらくは自身で考えた末のキャッチコピーなのでしょう。何よりそのほうが面白い。

 

この『ブレンパワード』のキャッチコピーが美しいかと問われれば、答えはNOでしょう。

 

自身を「作品世界の神」と規定するが故、超越者としての一言で作品を表現した宮崎駿氏と、それを詫び寂びの技法で以て美しく言語化した糸井重里氏

 

しかし、このキャッチコピーからは、人と“もののけ”の間で苦悩するヒロインや呪いを受けてなお強大なモノに立ち向かおうとする主人公の姿は見えてきません。

 

誤解しないでいただきたいのは、決して「生きろ。」を否定しようというものではないということです。『もののけ姫』という物語の顛末を考えればこのキャッチコピーで正しいと言えます。

 

一方で、「全長18mの人型機動兵器同士の殴り合い」を隠れ蓑に、人間の業やそれに引きずられてなるものかと足掻く若者たちを描き続けてきた富野由悠季氏。

 

2025年度に1500億円もの売上を親会社にもたらした『ガンダム』ですが、結局『ジブリ映画』ほど大衆的な作品とはなりませんでした(十二分な市民権は得ているとは思うが、あくまで「オタク的な作品」と捉えられがちではある。故に富野氏はいわゆる「オタク」が嫌いなのですが…)。

 

だからこそ富野氏は、耳目を集める意味でも、この渾身のカウンターパンチ「生きろ。」に感心しきりの私たち大衆に向けて叩き込んだのだと思います。

 

 

 

「“どこかの誰か”に『生きろ』などと諭されずとも、人は日々必死に生きるものだ」

「若者がただあるがままに生きようとするその意志を、老人が云々するなどおこがましい」

 

 

 

そんな富野監督の『反骨精神』や『青さ』が垣間見える、決して美しくはなくとも、泥臭くて昔どこかに忘れてきてしまった何かを思い出してハッとなる、そんな名キャッチコピーだと筆者は思います。

 

 

 

※正直富野氏もいろいろ問題のある人物ですのでこの辺は「価値観の相違」という他なく、これに美しさを感じているのは筆者が最も尊敬する歴史上の人物がフローレンス・ナイチンゲールである点も踏まえてご覧いただきたい、というのが正直なところです。

多分、誰かの為に、あるいは信念を貫くために、泥に塗れることを厭わず戦える人が好きなのでしょう。

筆者自身も、教育者の端くれとしてこうありたいものです。

 

 

 

さて。

 

職務上はもちろん「連休中も勉強しなさい」と言うことになるのですが(6年生の皆さんはVテストに向けて主に算数の復習をしていただきたいです)、時には休息も必要です。

 

様々な娯楽が氾濫する昨今、「あれをしろ」「これを見ろ」などと野暮をいうつもりはありませんが、発信者として、受け手として、その感性を磨くためには、様々な作品(小説であれ映画であれゲームであれ)を「食う」機会を多く持たれるに越したことはありません。

 

「若いうちに食ったものが作品に出ている」

 

筆者の小説を読んだ友人の言葉です。

 

できるだけ良質なものを食って、良質なものを発信できるようになっていきたいものです。

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